【old tale】[
その夜は何だがざわざわと、木々も風も、空さえも黒く渦巻き
不安に慄いているようでした。
町に行っていたユーリが馬で飛び込んでくるなり
サティの手をぐいぐい引っ張り、今しがた自分が乗ってきた馬に乗せました。
「いつまでここに居るつもり?
あなたはこの家の人では無いのだから出て行って!さぁ早く!
関係ない人を養う義理なんて無いのだから!!
行け、行きなさい、ストーム!兄さんの所へ!!!」
ユーリはそう言うと、馬に思い切り鞭を入れ、
馬は、ストームは、サティを乗せて夜の中を疾風のように駆けて行きました。
騒ぎを聞きつけたお手伝いと庭師が驚いて何事かと訊ねます。
ユーリはくるりと振り向いて出口を指差し言いました。
「あなたたちも今この瞬間で辞めてもらいます。
この家とは何の関係もありません。
関係の無い人は早く出て行って!!」
ユーリの顔は、眼ばかりキリキリと尖り、真っ青で、
握り締めた手は震えています。
戸惑うお手伝いと庭師の耳に、遠くから何か、大勢がワーワー言う声が聞こえます。
窓から町を見下ろすと、チラチラと赤い松明が、何本も何本も何本も、
こちらに向かって来るのが見えました。
「さぁ早く!!お願いだから出て行って!!」
泣きながら懇願するユーリの震える手を取り、老婆が言いました。
「私は天涯孤独の身。出て行きたくともここより他に居場所はございません。
後生です、どうかお側に居させてください。」
庭師のおじいさんは全てを察し、ひざまずき、
ユーリの足に額を付ける様にして謝ると、
孫を探しに行くと言います。
ユーリが泣きながら首を振り、
「探してはいけない、今はただ逃げてください」
と言いますと、庭師は止めるユーリを振り切って町の方へとかけて行ってしまいました。
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