『innocent place』
* BGM from VAGRANCY *


【old tale】W


仲良くなったお手伝いの老婆が言いました。

「ジュリアン様はとてもとてもお優しい方です。
 私は知っています。
 ジュリアン様が他所の国の人を追い返したその訳を。
 あの人達は皆、治す方法の分からない、恐ろしい病気になっていたのです。
 死に至る恐ろしい伝染病です。
 そんな病気をこの飢饉で弱った貧しい土地に入れて御覧なさい。
 あっという間に広まって、みんな死んでしまった事でしょう。
 私は知っています。
 ジュリアン様がどれほど心を痛め、
 あれから毎晩、医学書を明け方まで読んでおられるかを。
 私は知っています。」


親切な庭師の老人は言いました。

「ジュリアン様は聡明な方です。
 私は知っています。
 ジュリアン様の伯父がジュリアン様を殺そうとしていた事を。
 毒を盛ったのは伯父の方です。
 ジュリアン様はカップを配っただけ。それだけです。
 あの伯父が領主になっていたら、ここはとっくに他国の物になっていた事でしょう。
 ジュリアン様が当主になられたのはまだ14歳の時でした。
 ジュリアン様は聡明な方です。
 私は知っています。」


いつも明るいユーリが怒ったように言いました。

「兄さんはちっとも誤解を解こうとしないのよ。
 病気の人々を追い返したのは事実だから、
 伯父様が毒で死んだのは事実だからって。
 本当だけど、違うのに。
 私はそれが、とってもくやしい。」


サティもとても悲しく思いましたが、
ジュリアンはこう言うのです。

「今は飢饉で、皆心が疲れているんだ。
 私の悪口を言う事で気が紛れるならそれでいい。
 私がもう少し有能になって、もう少し豊かな暮らしが出来るようになったら
 皆も認めてくれるだろう」





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