すでにあふれ出た血は戻しようもなく さらにあふれ出る血は押さえようもなく、 どんどんどんどん流れ出し、 抱き起こしたユーリの顔は雪よりもまだ白くなって行きます。 動転したままのジュリアンは、自らの手首をかき切ると、 その血を飲ませ、その手で傷を押さえ、 必死で血を補おうとします。 冷たくなっていく妹を抱き、 助けを求めて周囲を見回し、 呆然としました。 見渡す限りの焼け野原。 死体が転がり 動くものは何一つありません。 月明かりに照らされた自分の手は 血にまみれて赤黒く、 禍々しい黒い爪には何者かの頭髪が絡み付いています。 全ては自分がしたことでした。 ジュリアンは月を見上げ、哭きました。 哭きながら自分の胸に 喉に 眼に 禍々しい黒い爪を突き立て引き裂きますが、一向に死ぬ事が出来ません。 何度目かに心臓をえぐったその腕を、微かに握る者が居ます。 「……兄 さん―…」 雪より白い顔色はそのままに、しかし茫洋と見開いた瞳は赫く変わり、 ウサギのようです。 「兄さん…サティは?サティはどうしたの?」 back+index+next