【old tale】]T



後はただ 黒い闇

汲めども汲めども尽きる事の無い

悲しみと 憎悪と 慟哭と

その闇はジュリアンの死んでしまった心の変わりに
ジュリアンを満たし、溢れ出し、
姿までをも真っ黒な闇へと変えてしまいました。

黒い闇は全てを壊し、
黒い闇は全てを燃やし、
黒い闇は全てを殺し、

決して満たされる事は無く、当ても無く

何もかもを飲み込んでいきました。

町全体が炎と化し、誰も彼もが逃げまどい、
倒れた者を踏み越えて行く中で、
真っ黒な闇の前に飛び出す者がおりました。

「止めて止めて、もう止めて!みんな…みんな死んでしまう!!」

闇にはどんな言葉も届きません。
手にした大きな鎌で薙ぎ払いました。

たくさんの血を流し倒れるその者は、それでも闇へ手を伸ばし、

「もう止めて…兄さん…!!」


それは妹のユーリでした。



黒い闇が動きを止め、血の海に横たわるユーリを見下ろします。
ですが、闇に満たされた心では、
それが誰なのか、大切な何かが、

思い出せません。

途方に暮れる黒い闇を 雲間から 一筋
月の光りが 照らします


細く、儚く、静かに、真っ直ぐに。


そのか細い月明かりは黒い闇の、
悲しみと憎悪と慟哭の奥底に、
微かに残ったジュリアンの心を照らしました。

そしてようやくジュリアンは、
妹のユーリを手に掛けた事を知ったのです。



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