※ 挿絵イラスト=信天翁 様より ※
【old tale】T
むかしかむしあるところに、魔女サティがおりました。
サティは深い森に住み、大変美しく優しい魔女でした。
無邪気で、純粋な、魔女でした。
サティはその不思議な力で森の動物達とお話をしたり、
ほんの時々訪れる村の人々の傷や病気を治したり、
失せ物が見つかるようにおまじないをしてあげたりしておりました。
ある日サティがいつものように森の泉に水を汲みに来た時の事です。
泉には先客がおりました。
この辺りを領地としている、若き領主ジュリアンとその馬です。
彼には悪いウワサが絶えません。
領主代行であった叔父を毒殺しただの、
他国から逃げてきた人たちを冷たく追い返しただの、
計算高く、冷酷で、無慈悲な人だと。
ですがサティは目が弱く、彼が誰だか見えません。
森深く住んでいるので、ウワサはちっとも聞こえません。
笑顔で近寄り、泉の一番綺麗で冷たいお水を差し出しました。
ジュリアンは少し驚きましたが、静かな声で
「ありがとう」
と言ってお水を受け取りました。
ジュリアンは何も喋りません。
サティは話すことが出来ません。
それでも二人は、
ジュリアンが思慮深く思いやりのある人で、
サティが無邪気で優しい人だ、
と感じる事が出来ました。
その日から、ジュリアンは泉に姿を現すようになり、
サティもまた、ジュリアンを待つようになったのです。
サティはジュリアンが泉に来るのを楽しみにしておりましたが、
彼が来るといつも心配になってしまいます。
それと言うのも、
ジュリアンは来るといつも穏やかに微笑んでくれますが、
たいそう疲れているようなのです。
わけを訊ねても、静かに微笑んで「大丈夫」と言うだけです。
サティはジュリアンのために何かできることはないだろうか
と考えるようになりました。
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