【Familiar spirits】]T



悪魔は一瞬怯んでしまった自分を恥じ、肩を怒らせ唇を尖らせると、

「そうよ、貴方は私の下僕なんだから、私の言う事だけ聞いていればいいの!」
「では私は貴方を何とお呼びしたらいいのかな?」
「え…ええっと――そうねぇ…。…メリーで良いわ。」
「貴方にそんな安っぽい名前は似合いません。やはり本当の名前でお呼びしたい。」
「駄目、駄目よ!名前は誰にも教えない!!」
「どうしても?」
「どうしてもよ!!」
「ではこうしよう」
「ちょっ…止め――…!!!」

メリーが制止する間も無く、クロフォードは滑る影の様にメリーを背後に周り抱きすくめるとその首筋に牙を突き立てた。

「なっ…あぁぁぁぁぁっっっっ?!」

咬まれた部分が熱く燃え、電流が流れるような官能が首筋を伝わり脳へと突き抜ける。
やっとの思いでクロフォードを振り払うも、膝に力が入らず無様に地べたに這ってしまった。

「嫌だ…貴方って、何者なの?」

手を付いたままキッと振り仰ぎ悔しげに唇を噛みしめてはみたものの、その眼はどこか恍惚としていた。
クロフォードは涼やかに微笑むと、

「……ただのアン・デット(不・死者)ですよ。さぁ、高貴な御方。貴方の名前を教えてください」
「駄目…駄目よ…!私に…名前を聞く事は許さないわ!!」

メリーの叫びに呼応するかのように再びクロフォードの指が手が黒い業火に包まれる。
が、クロフォードはその炎を楽しむかのように眺めながら、

「では尋ねるのは止めにしましょう。私が聞かなくても、貴方がご自分で名乗ってくれるでしょうから」

その瞬間、クロフォードの手を焼いていた業火は先程と同様幻のように消えてしまった。
思わずポカンと見上げたメリーの視線がクロフォードの怜悧な視線とぶつかる。
慌てて逸らそうとしたが、魅入られたように目が放せない。先程咬まれた首筋が再び熱を帯び、痺れるような快感が甦る。

「メリーだなんて、チープな名前だ」

そうだ、私はそんな安っぽい名前なんかじゃない。

「ふふっ。『メリー』さんのヒツジ、ですか」

笑わないで!笑うな!そんな名前じゃない…!本当は――…私の本当の名は―――…

「さあ、高貴な御方。私は貴方を何とお呼びしたらよいですか?」

痺れた頭にクロフォードの落ち着いた静かな声が染み込み木霊する。
嗚呼、彼に本当の名前で呼んで欲しい。
私の名前、私の本当の名前は…

「Murmur」 








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