【Familiar spirits】]



「あらまあゴメンナサイv でも全然言うこと聞いてくれないんですもの〜。」

媚びる様に上目使いでクロフォードを見上げる悪魔は、自分の唇に当てられたクロフォードの手を握ると
とろけそうな至福の表情で言った。

「でも、いいのかしら?海老で鯛を釣っちゃった♪これで貴方が死んだら私のモノよv」

クロフォードは指に黒々と刻まれた唇の痕を物珍しそうに翳して見ていたが、

「ふむ。ですが、私は既に死んでいる訳だし…こう言う場合はどうなるのかな?」

と呟いた。

「そー言う場合は、こうなるのよv『膝まづいて私の靴にキスなさい』♪」

一瞬、二瞬。
何も起こらないかに見えた次の瞬間、唐突にクロフォードの指が――【悪魔の刻印】が火を噴いた。
真っ黒な業火は焦らす様にゆっくりゆっくりジリジリと指から手へ、手から腕へと這い伝っていく。
焼けた皮膚を更に無数の針で突き刺されるような痛みに、普通の人間なら気が触れる事だろう。
だがクロフォードは片眉をくっと吊り上げただけで、

「なるほど、こうなる訳か。」
「ねぇねぇ、我慢しなくていいのよ?折角のイイ男が台無しになっちゃうわ!」

ハラハラとクロフォードの顔と燃え続ける腕を心配そうに交互に見つめる悪魔は、ついに根負けして叫んだ。

「あぁん、もう、強情なんだから!イイわ!靴にキスなんかしなくても!」

悪魔が言い終わらない内に黒い炎は幻のように消え、クロフォードの手も何事もなかったように傷一つありはしなかった。

「ありがとう。ついでと言っては何だが、このキスマークを消す事は出来るのかな?」
「そんな事教える悪魔が何処にいるのよ?」

ツンツンとすっかりご機嫌斜めになってしまった悪魔を宥める様に、クロフォードは悪魔の耳元でそっと囁いた。

「では、私のご主人様となる方の名前を教えてくださいませんか?」

悪魔はサッと表情を変えると、クロフォードから身を引いた。

「名前を聞いて…どうするのよ」
「どうも。どうもしない。仕様も無い。私は貴方の下僕なのでしょう?」

そう言って悪魔の刻印が刻まれた長くしなやかな指を翳し、からかう様な冷笑を向けるクロフォード。 





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